ヨッピーさんという人気のWebライターがいます。
例えば以下の記事など、一度は目にしたことがありませんか?
・市長って本当にシムシティが上手いの? 千葉市長とガチンコ勝負してみた
・42.195キロ背負って、42.195キロ走るとヒザが壊れる事が判明
いずれもヨッピーさんらしい、ついつい最後まで読みたくなってしまう記事です。
そんな人気者のヨッピーさんが、初の著書となる「明日クビになっても大丈夫! (幻冬舎単行本)」を出されたとのことで、早速Kindle版を読んでみました。
よくありがちな「会社員なんかやめて、好きなことで生きていこうぜ〜」みたいな軽いノリとは一線を画す、会社員にとって現実的なメッセージが随所に散りばめられています。
本当に好きなことなら、仕事をしてようがしてまいが勝手に始めているはず。あとはそれをちょっとずつ稼げる形にしていくこと。この2つのポイントを突き詰めることで、会社に縛られない生き方を手にすることができると書かれています。
副業収入を増やしたい、あるいは会社員としての働き方に行き詰まりを感じている、そんな人は絶対に手にとって読むべき一冊です。
会社とは個人のやりがいを奪う場所
今でこそ人気のWebライターのヨッピーさんですが、大学卒業後は新卒として大手の商社に入社することになります。
入社後はくだらないことをしては上司に怒られる日々。
そもそもの仕事も、まったくといっていいほどやりがいを感じられない状態。そのときのことを、冷静に分析します。
「その人にしか出来ない大事な仕事」が社内にあるのなら、それを「誰にでも出来るように仕組みを作り替える」のが組織の論理で、これが「個人のやりがい」と明確に対立する概念になる。
(「明日クビになっても大丈夫!」より)
「仕事でやりがい」なんて言うけれど、そんなことは幻想でしかないよ。そういう現実に、まだ20代だったヨッピーは早々と気付きます。
確かに、会社でも組織でも大きくなればなるほど、個人の自由がなくなってくるというのは自分の経験とも良く一致します。その代わり業務の効率は極限まで高まっているので、それが結果的に従業員の待遇や給与といった形で還元されます。
一方でベンチャーや小さな会社は、やりたいことをできる自由はあるかもしれません。ただし安定性はありませんし、給与もなかなか上がりません。いわゆる「やりがい搾取」と呼ばれたりもします。
余談ですが、私がかつていた科学研究業界というのがまさに「やりがい搾取」になっていました。確かに好きな研究は出来るかもしれないけれど、将来の保証もなければ収入も満足に得られない、まさにそんな状態でした。
個人のやりがいと得られる収入は明確に反比例する。それが私たちの生きている「旧型」の世界の働き方なのです。
本当に好きで仕方がない事なら無給でもできる
そんなヨッピーさんですが、心の大きな支えとなっていたのがインターネットの存在でした。
会社員になる前からインターネットで文章を書いてきた縁もあり、当時まだ出来たばかりの「オモコロ」というサイトに記事を書いてみないかと誘われる事になります。
原稿料も大してもらえず、それどころか経費も自腹なため、書けば書くほど赤字になるありさま。会社員としての仕事もあるため、取材や執筆は土日を費やすことになり、ほとんど休む暇もないような状態です。
にも関わらず、日頃できないことを思いっきりできる喜びに、ヨッピーさんはサラリーマンとしては決して得ることのできないやりがいを見出したのです。
結局、会社から転勤の辞令が出たタイミングで仕事をやめることになり、その後はWebライターの仕事に専念することになります。
会社員としてのタガが外れたことで、それまで以上に自由に記事を書いていった結果、いつのまにか専業のライターとして生活出来ているようになったといいます。今では会社員時代よりも稼いでいるとのこと。
ライターとしては素人でしかなかったヨッピーさんが、なぜ会社員時代よりも稼げるようになったのか?本書では次のように述べられています。
結局のところ、「嫌々やってるプロ」と「好きでしょうがない素人」が勝負したら素人が勝つことの方が断然多いのではなかろうか。
(同書)
誰に頼まれたわけでもなく、ただただ好きだからやっている。そうした情熱や生まれ持った特性を発揮できることこそが、プロをも打ち負かすエネルギーになるということです。
逆に言うのなら、そのくらいの熱量をもって取り組めないようなことならば、たとえサラリーマンを辞めて専業になったとしても、到底続けることは出来ないということでもあります。
本当に好きなことなら、一銭も報酬がもらえなかったとしても続けられはずです。あとは、その情熱をお金に変えるための工夫をすれば良いだけのこと。
SNSやブログで個人が気軽に情報を発信できるようになった今、その道すじは一昔前よりも遥かに整備されています。
本書の後半では、好きなことをお金に変えるための方法論やマーケティング的な考え方が具体的に書かれていますので、興味のある方は是非とも手にとってみて下さい。
「好きなこと」を見つけよう
私はこうしてブログで文章を書くことが比較的好きで、今では副業として毎月数万円程度の収入を安定して生み出せるようにまでなりました。そういった意味では、好きなことで稼ぐ道筋を見つけられたようにも思えます。
一方で、ブログを書くことに寝食を忘れてまで打ち込めるかというと、今の段階ではちょっとよく分かりません。会社員を辞めてフリーランスで生きていことは私の目標でもありますが、それに値するだけの情熱を注げるほど好きなことなのか、吟味する必要がありそうです。
あらためて考えてみると、何もかも忘れて夢中になれるような「好きなこと」を持っている人というのはそれほど多くないのではとも思えます。これからの時代、好きなことを見つけた個人というのはそれだけで強みになるはずです。
好きなことを見つけ出せれば、そこから稼ぎ出すことは実はそれほど難しくありません。グーグル対策であったり、SNSによる影響力の付け方というのは、ある程度の努力や訓練で比較的簡単に身につけられるというのが、わたしの現時点での感覚です。これらのスキルを身につければ、広告収入や物販で稼ぎ出すことが可能となります。
ちょっと大げさな言い方かもしれませんが、これからの教育のひとつの目標は、その人にとって心の底から楽しめる「何か」を発見できるためのお手伝いになるのではないか、と思っています。そして、そこから収入を生み、社会の中で活躍できるような個人になるためのスキルとノウハウを身につけさせるのが、教育の第2の使命になるのではないでしょうか。
まとめ
ヨッピーさんの新著は、副業で稼ぎ出し、あわよくばフリーランスになって会社から解き放たれたいと考えている人には是非とも読んで欲しい本です。
ただしそこに書かれているのは、「何も考えず、まずは会社を辞めちゃいな〜」という無責任な主張とは真逆の、会社員に向けた現実的な第一歩の踏み出し方です。
「副業」という武器で少しずつレベルアップしつつ、自分に取って本当に好きなことを見つける、そんな生き方が可能となる世の中になりつつあります。この潮流を逃さず、悔いのない人生にしていきたいと、そんなことを強く感じました。