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バイオ系ポスドクのための転職必勝マニュアル

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このブログのメインコンテンツである「ポスドク転職物語」では、バイオ系ポスドクがブラック研究室を飛び出して民間企業へ転職するまでの顛末を、実体験をベースにしてつづっています。

物語の中にもあるように、ポスドクと呼ばれる博士研究員達の雇用環境は非常に悪く、かといって民間企業へ転職しようとしてもなかなかうまくいかない状況が続いています。このような状況を皮肉って「高学歴ワーキングプアー」などといった言葉も出てきており、ポスドク問題は社会的な関心を呼ぶようになっています。

さて、私がポスドクから民間企業に移って5年が経ち、その間に多くのポスドク経験者に会ってきました。その中で思ったのは、ポスドクというキャリアは転職にする上でまったく不利にならない、それどころか有効な使い方をすれば極めて充実した人生を送ることができる素晴らしい切符であるということです。

いま実際にポスドクとして苦労している人にとっては見えなくても、客観的な視点で眺めてみると分かることも色々とあります。ここではそういった転職活動に苦しんでいるポスドク、特にバイオ系研究者に向けてキャリアパスの作り方の一例を紹介したいと思います。

そもそも何故ポスドクの転職が困難なのか

ポスドクの雇用問題を考えるにあたって、そもそも何故これほどまでにポスドクの転職が困難なのかを冷静に考える必要があります。

もっとも単純な説明としてはアカデミアのポジションが最初から少ないといったものが考えられます。大学院重点化政策によって増加した博士号取得所ですが、受け皿となる大学側の教員数は増えなかったため、行き場所のなくなった研究者の一時的な避難場所としてポスドクという身分ができました。ところがいつまでたってもアカデミアのポジションは増えることがなかったため、結果として不安定な身分のまま年齢を重ねていくポスドクが増加したのです。

一方で民間企業に目を向けても、研究職ポジションというのは狭き門です。研究職というのは非常に細分化が進んでいるため、それまでの研究内容とよほどマッチしていないかぎり、博士号を持っているといった程度では簡単に転職できないという事情があります。そのため、アカデミア側で受け入れきれない研究者を民間側に横流ししてポスドク問題を外部的に解決しようとする大学の思惑はなかなかうまくいきません。

このようにポスドク問題はアカデミアの構造や研究職の特殊性といった文脈で語られることが多いのですが、私はこの議論には今の日本の抱えている問題が丸ごと抜けているように思えるのです。そのことを詳しく説明しましょう。

転職活動をする上で私たちが知っておかなくてはいけないこと、それは今の日本は身分制社会になっているということです。もっと具体的にいえば、日本では正規雇用非正規雇用の間に深くて大きな溝が横たわっており、両者の間で明らかに身分差が生じている、もっといってしまえば階級のようなものが生まれつつあるという事実です。

非正規雇用における身分格差は色々とありますが、最大の問題は非正規から正規雇用への門が極めて狭いということです。非正規社員は正規社員に比べて職務経験が限られているとみなされ、転職活動において圧倒的に不利な立場に置かれてしまいます。今の日本で正社員ポジションを取るには新卒枠で採用されるのがもっとも簡単ですが、逆にいうとこの「新卒カード」を有効に使えずに非正規雇用からキャリアをスタートさせた場合、正規雇用ルートへの道は途端に険しくなってしまうのです。

ここまでですでにお気づきかと思いますが、ポスドクという身分はこの「新卒カード」を使うことなく、いきなり非正規雇用からキャリアをスタートさせてしまうことを意味しています。しかも博士号を取得するのはどんなに早くても20代後半であり、そこから3〜5年程度をポスドクとして過ごした場合、30代中盤あたりまでを非正規雇用で生活することになるのです。この段階になって民間を含めた転職マーケットを意識した際に、自らの市場価値、つまり30代半ばまで非正規として勤務してきたという経験がほとんど何の価値もないことに気づくのです。これが私なりに解釈したポスドク問題の本質です。

やりたいことでなく、できることにフォーカスする

今の日本に生まれつつある身分社会は貧富の格差という形で確実に社会に影響を及ぼすため、長期的に見れば日本にとってマイナスとなるのは間違いありません。しかしだからといってどうしたら良いのか、今のところろ私には具体的なアイディアはありません。しかし、そのような格差社会においてポスドクかどのように行動すのがもっとも合理的なのか、そのための具体的なアドバイスをすることはできます。今回はそのことをお話しします。

ポスドク転職物語の中で主張したように、ポスドクの転職において重要なのは「何がしたいか」ではなく「何ができるか」です。

(参考記事)ポスドクのできること、って何だ!?

これは口で言うのは簡単ですが、ポスドクにとっては難しい課題です。というのも研究というのは「何でこんなことが起きるんだろう」という内なる素朴な疑問を解決するために行うことであって、その根底には「知りたい」という愚直なまでの欲望があるからなんですね。ポスドクにまでなって研究を続けるということは、この欲望が人よりも強いからこそのものです。そういった人たちがアカデミア以外のポジションを探すときに「こんなことがやってみたい」という欲求を心の拠り所にしたとして、誰がそれを責められるでしょう。

ところがこの方法はうまくいきません。というのも転職活動というのはつまるところ自分という商品を売るための営業活動にほかならないからです。営業をする上で一番重要なのはマーケティングです。マーケティングというのは要するに、相手がどんなものを欲しているのかを相手の立場に立って考えるということです。そこで大事なのは、あなたがどう思っているかでなく、相手があなたのことをどう思っているかという点なのです。相手が知りたいのは、あなたが何をできるのか、ただその1点です。

さてそうすると研究職以外でポスドクができることは何か、というのが次の問いになるわけですが、転職活動においては非常にはっきりしています。それは、

  • 英語を使えること
  • その業界のことをよく知っていること

の2点です。この驚くほどシンプルな2点を意識していれば、ポスドクの転職活動は必ずうまくいきます。

英語については別の機会にじっくり書いてみたいと思いますが、ここでは英語を話せる、ではなく英語を使える、と書いてあることが重要です。ポスドクが日常業務で実際に使っている英語のスキル、つまり論文を読んだり書いたり、あるいは英語でディスカッションをするという能力はそのまま転職で役立ちます。ただし普通の日系企業ではこのようなスキルを使う機会は実は驚くほど少ないです。グローバル化だとか言っていますが、ほとんどの人は仕事で英語を使う機会はほとんどありません。ポスドクの英語のスキルが活かせる場所、それは外資系企業です。これが第一のポイントです。

第二のポイントは業界知識です。今回はバイオ系のポスドクを念頭においてこの記事を書いていますので、例えばそういった人たちに近い業界、具体的には製薬、臨床検査、診断技術、そして私のいる研究機器メーカーなどはポスドクとしての経験がそのまま活かせます。ただし研究職ではないところがポイントです。研究職ではないにも関わらず研究に関する高度な知識が要求されるポジションに人材のニーズがあるのです。

例えば製薬業界であれば研究職しか思いつかないかもしれませんが、近年メディカルアフェアーズという新たな職種が生まれており、ポスドクのニーズは高まっています。給与面を含めた待遇でも相当な高水準が期待できるのも大きなポイントです。

メディカルアフェアーズについては別の機会に詳しく書きたいと思いますが、今回は私にとってより身近な存在である科学機器メーカーにおけるフィールドアプリケーションサイエンティストというポジションについて紹介します。

フィールドアプリケーションサイエンティスト(通称FAS)とは何か

研究者は日常的に実験器具、試薬、そして測定装置などを使っていると思いますが、当然これらの製品は全て民間の企業が製造し、販売しています。これらの企業は一般的にほとんどが外資系です。そしてこうした企業には営業や経理といったどこの会社でもあるような職種の他に、専門的な製品を扱っているからこその職種があります。そうした職種の一つがフィールドアプリケーションサイエンティスト、通称FASと呼ばれるものです。

FASの業務内容は各企業により多少異なりますが、概ね以下のようなことをすることが多いようです。

  • 装置や試薬に関する専門的な問い合わせに対する回答
  • 使用方法に関するインストラクション
  • 製品セミナーのアレンジ
  • 学会や展示会への参加
  • キーとなる顧客との関係構築

要は研究者が自社の製品を使って研究をする際に、専門的な立場から指導、アドバイスをする職種と考えればいいと思います。

一昔前まではFASといえども理系の学部卒や修士卒くらいがなることが多かったようですが、最近ではPh.D.を取得している人材が数多く採用されています。理由としては、お客さん側からすれば学位をもった人間の方が研究の話しをしやすいということのほかに、海外のFASはほとんど学位を持っていることから社内的な整合性を保つために日本でもポスドク採用が進んでいるということがあげられると思います。

FASの待遇ですが、マネージャー職になる前のスタッフレベルで年収は500万円〜800万円くらいです。外資系といえども日本国内での雇用ですので当然正規雇用、つまり正社員であり、基本的には終身雇用が保障されています。仮に人員整理などがあっても専門職であるFASは比較的身分が安定しており、むしろ高待遇を求めて自ら転職する人もいるくらいです。外資系メーカーでのFASの経験があれば、似たようなポジションを探すのはそれほど大変ではありません。

ポスドク時代の雇用条件と比べるまでもなく、他の職種と比較してもかなり恵まれた条件で勤務することができると思います。ポスドクという肩書きと経験が、企業にとって価値のあるものだとみなされているからこその待遇を受けられるのです。これこそが、「ポスドクにできること」を考えたときの良い転職例となるのではないでしょうか。

まとめ

バイオ系ポスドクのための転職必勝マニュアルと称して、ポスドクのキャリアについて考えてみました。

もしも私の意見に多少なりとも心を動かされたら、まずはどんなポジションがあるのか転職エージェントに相談してみると良いと思います。転職エージェントについては、以下の記事を参考にしてください。

転職を考えているポスドクが知っておきたい転職エージェント3選とその活用法

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