ビットコインに代表される仮想通貨は、為替(ドルと円、など)と同じように価格が上下します。
例えば、1BTC = 30万円 だったものが、その次の週には1BTC = 20万円 になったりすることが普通にあるのですね。
価格が上がっているときは含み益が出ているので安心ですが、価格が下がってしまった場合はなんとも不安な気持ちになります。
特に定期的にやってくる暴落のときは、とっととビットコインを売ってしまいたい感覚に襲われるのではないでしょうか。
しかし、ビットコイン投資をするのであれば短期的な上げ下げに一喜一憂しないほうがよいでしょう。
今回はビットコインが暴落しているときにこそ考えておきたい、仮想通貨の本当の価値について考えてみたいと思います。
そもそも仮想通貨は不安定
仮想通貨の価格を示すチャートをみると、乱高下していることに驚かされます。
このチャートは2017年5月から7月下旬までの値動きを示したものです。
15万円程度だったものが1ヶ月後に倍の30万円をつけ、その後22万円を切る大暴落を起こした後、反発して26万円まで戻しています。
このようにビットコインの価格は非常に不安定です。
ビットコインだけでなく、その他の仮想通貨もだいたい似たような値動きをしていることから、そもそも仮想通貨というものは値動きの激しいものだといえます。
仮想通貨に投資するということは、こうした不安定な値動きをするものに投資するということを肝に銘じたほうが良いでしょう。
したがって、投資額はあくまでも余裕資金でやるべきであって、資産の大半を仮想通貨につぎこむような行為はギャンブルと同じです。
ちなみに私のメインの投資先である先進国株式のインデックスファンドですが、過去の値動きからどのくらいまで値下がりするかの確率を求めることができます。
それによると、元本割れして元の投資額の3分の2になってしまう確率はおおよそ50年に一度です。また、元本の半額にまで下がってしまうのは100年に一度程度の事象であると考えられます。ちょうどリーマンショックの際の下げ幅がこのくらいでした。
先ほどの例で上げたビットコインの乱高下がたった2ヶ月のあいだに起こったことを考えると、仮想通貨の値動きがいかに常軌を逸したものであるかが良くわかります。
仮想通貨の「価値」に投資する
このように仮想通貨は投資先としては非常に不安定であり、リスクが高いといわざるを得ません。
それにも関わらず私がビットコインに魅力を感じるのは、そこに大きな価値を感じているからにほかなりません。
では、ビットコインの価値とは一体何でしょうか?
それは、中央集権的な権威を必要としなくても信用を生み出すことができるという画期的なテクノロジーです。
今までの常識では、通貨というのは国家や中央銀行などの後ろ盾がなければ成立しないものと考えられていました。このような巨大な機関が信用を与えることによって、通貨には価値があるのだという神話が信じられてきたのですね。
ところがこうした信用というのは、実ははっきりした実態がありません。逆にいえば、ひとたび国家の信用が失墜すれば、通貨の価値は暴落します。ハイパーインフレは、まさにこういった結果として紙幣が紙切れになってしまう事態のことを指します。
その点、仮想通貨というのはブロックチェーンというアルゴリズムが信用を生み出しており、その実態ははっきりしています。
P2Pというネットワークでやり取りされる全ての取引はブロックチェーン上に保存されており、そのデータを改ざんすることは事実上不可能です。データは誰でも見ることができ、どのビットコインアドレスにいくらの残高があるのか、極めて透明に公開されます。
こうした仕組みが通貨と同じ機能をもつとはにわかに信じられませんが、ビットコインの登場以来その時価総額は上がり続けており、そのことがまさにブロックチェーンが信用を生み出すことに成功していることの証拠となっています。
私は、国家やそれに準ずる機関が信用を与えるということに対して、非常に懐疑的な立場を取っています。そもそもの実態がはっきりしませんし、なによりもコストが掛かりすぎます。
そのように考えるに至ったのは、かつて働いていた監査法人での経験によります。
監査法人で働いて気付いた「権威」の価値とは
監査法人をご存じない方のために簡単に説明すると、要は企業などが作成した帳簿が正しいものかどうか、第三者の視点で確認をする、そういった立場の集団と考えておけば良いでしょう。
企業というのは、財務的な取引を数多くこなしています。銀行への入出金のほか、取引先からの仕入れ、得意先への商品の出荷、そして代金の回収。
こうした取引の全てにおいて、従業員や経営者は不正を働く動悸が存在します。
銀行からお金を横領したり、売上をごまかしてたくさん儲けたように見せかけたりなど、その手口は多岐に及びます。
そこで監査法人は、そのような不正がおこらないような仕組みを作っているか確認し、企業が提出する財務諸表が正しいものであるかのお墨付きを与えるのです。
私はどのようにして監査法人は財務的な情報に信用を与えているのか、その仕組が知りたくて監査法人で働いてみたことがありました。
そこで見たもの、それは私の想像とは全く異なった世界でした。
一言で言えば、手元の帳簿と、それを作成するために使ったデータ、この二つをただ見くらべているだけ。それらの数字が一致していれば、監査完了なのです。
あえて簡単に書きましたが、監査の本質というのは結局はこの程度のものです。
そうするといろいろと疑問が湧いてきます。例えば、帳簿作成に使う元データ、これを改ざんされた場合はどうなるでしょうか?監査人は不正を見抜けません。そこで、元データを作るための元データ、というふうにどんどんと遡っていくのですが、結局はどこかで妥協するしかなく、監査人が騙される可能性は排除できません。
というか、実は監査人は不正を見抜く必要まではないので、あとになって不正が発覚した際は、自分たちは騙された、といって言い逃れします。
こんな調子にも関わらず、監査法人は財務諸表にお墨付き、つまり信用を与えることができる機関とみなされています。
それは何故か、というと、国がそう決めたから、以上の理由はありません。
本質を知ってしまえば、なーんだ、という感じですが、そのことに気づいている人は実はまだ多くありません。
みんなが信用しているから自分も信用する、というのが今までの中央集権的な権威の本質なのです。
ところが今述べたように、そうやって生み出された信用には本質的な裏付けはありません。
企業における取引のすべては、原理的にはブロックチェーン内に記述可能です。そうなれば、取引を改ざんすることは事実上不可能になるため、敢えて第三者機関である監査法人がチェックする必要はなくなります。
そうすれば、今まで監査のために支払っていた巨額の(なおかつ本質的には全く無駄な)報酬を支払わずに済み、その分を顧客や資本家のための投資にまわすことができます。
こうして生まれた価値、それが仮想通貨(あるいはブロックチェーン)が生み出す本質的な価値であると、私は考えています。
まとめ
仮想通貨は値動きが激しいため、その波にうまく乗ることができれば巨額の富を手に入れることも可能でしょう。
そのような投機的な目的からビットコイン市場に資金が流入しているのも事実です。
ただ私は、ビットコインの本質的な価値はそういった短期的な、近視眼的な目線で語られるべきではないと信じています。
ブロックチェーンが生み出す、非中央集権的な信用の創造。
これこそが仮想通貨の生み出す本当の価値です。これに投資するのだという意気込みを持って、是非とも長い目で仮想通貨と付き合っていきたいと思います。