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断言しよう。会計監査の仕事は人工知能が発達しても決してなくならい。

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どうも、ケンドー修介(@tensyoku_postdo)です。

みなさんは会計監査という仕事をご存知でしょうか?

たぶんほとんどの人には馴染みがないと思いますが、簡単にいってしまえば会社が作った経理的な書類(財務諸表)が正しいかどうか、第三者機関である監査法人がチェックする、そういった作業のことを指します。

私はバリバリの理系研究者として働いていたのですが、ひょんなことから会計士の資格(USCPA)を取って監査法人で働くという、ちょっと変わった経歴をもっています。

会計というと数字を扱う仕事なんで、理系で研究者だった自分にもできるかなー、という甘い考えを持っていたんですね。。

ところが実際に働いてみて思ったのは、こんな理不尽で意味不明な仕事が世の中になるなんて!、という衝撃でした。

監査や会計という仕事は人工知能が発達するとまっさきになくなる、などと言われていますが、私の意見は真逆です。こんなに人間臭くて感覚的な仕事を、人工知能でわざわざ置き換える必要性が感じられません。

今回はアウトサイダーとして監査法人という世界を眺めて感じた、私なりの素朴な感想について書いてみたいと思います。

東芝が見せつけた監査の限界

私が、会計監査って茶番だなー、と思った一番の理由が、東芝にまつわる一連のニュースです。

東芝は2015年に利益の水増しなどの「不適切会計」が報じられると、一連の経営者が退陣するとともに、それまで会計監査を担当していた新日本監査法人との契約を解除しました。

新日本監査法人は東芝の不正を見抜けなかったわけですから、もうこの時点で監査の意味ってあるの?、という感じですね。

東芝が新日本に代わってに契約したのはPwCあらた監査法人でした。国内でのシェアは他の大手監査法人に比べると小さいPwCは、これをチャンスとばかりに東芝の新しい担当となることに成功します。

ところが2016年の暮に原発関連子会社の巨額赤字が明らかになると、PwCと東芝の関係は急速に悪化します。

監査法人の交代の際には、クライアントの財務状況をしっかりと調査した上で担当になります。ところがPwCは、東芝の子会社にこれほどまでの巨額な赤字があることを知らされていなかったのでしょう。東芝に、いわば「騙された」形となったPwCは、完全にプライドを潰されたことになります。

その結果、PwCは東芝の四半期決算に対して「意見不表明(Disclaimer)」という、事実上のNoを突きつけることになります(正確には「結論の不表明」)。

この意見不表明というのは監査法人が出すレポートの様式の中の一つです。これは監査を遂行するに足る充分な情報や信頼性を得ることができなかったので、そもそも財務状況が適正かどうかという意見を出せない、いわばスタート地点にすら立てなかったという意味を持ちます。

当然、こんな状況では東芝の財務諸表に信頼性はないため、東芝は上場廃止の崖っぷちに立たされてしまいました。

そこで東芝が次に考えたことは、PwCとの契約を打ち切り、新しく別の監査法人と契約するということ。そして新しい監査法人に「適正意見」という、財務諸表のお墨付きを付けてもらおうと画策しているのです。

しかしPwCより大手の監査法人は、こんなリスクのある契約を結ぼうとは思いません。そこで東芝は、国内の中堅監査法人と契約するのではないかと見られています。

これもよく考えてみると変な話で、大手監査法人ではお墨付きをもらえないのに、なぜ中堅監査法人に変更しただけで適正意見がもらえるのでしょうか?そもそも東芝のような巨大な会社を、国内の中堅法人が、しかも短期間の間に監査を完了させるなどということができるのでしょうか?

変なことずくめで、頭がこんがらがってきました。

これらのストーリーの背景にあるのは、結局はルールなんてあってないようなもので、人間がそのときの都合でなんとなく感覚で決めていっているという実態です。

東芝の経営陣から逮捕者が出ていないのも、いつまでたっても上場廃止に追い込まれていないのも、東芝が巨大で伝統のある一流企業だからです。そこには統一的なルールも原理原則もなく、ただただ大人たちの勝手な都合で、東芝は今も経営を続けています。

率直に言って、こうした価値観は理系の研究者として生きてきた自分にはまったく理解できません。

別に否定するわけではなく、ただただ意味が分からないのです。

人間の作り出したルールに合理性はない

そもそも会計というのは全て人間が作り上げたルールから成り立っています。これは会計に限った話ではなく、税務もそうですし、法律全般も人間がいわば恣意的に作り上げたルールです。

ルールがいつでもそのとおりに適用されるかというと、これも人間がそのときどきによって解釈を変えていったりします。そこに合理性や一貫性はありません。

この「ルール」ということを考えるときに、私は先日行われた囲碁における人工知能の活躍のことを思い出します。

人工知能のAlphaGoは、人類最強と呼ばれる棋士たちを次々と打ち破っていきました。そこで繰り広げられた手は、これまで人間が考えていた定石とは一線を画すものでした。またAlphaGo同士の対局として公開された棋譜には、これまでの常識ではまったく意味の分からない、はっきりいって意味不明の手がいくつもあったそうです。

これは、人間がこれまで考えていた囲碁の定石というルールには、合理的な根拠がないということを示唆するものです。

もともと囲碁では味がいいとか悪いといった、非常に感覚的な言語で表現されることが多いゲームです。で、その感覚がどうやら間違っているようなんですね。そうなると感覚ではなくて、もはや錯覚ということになります。

会計のルールも人間が合理的だと思って作り出しているルールですけど、実のところはほとんど感覚で作られていると言っていいと思います。そうすべきである絶対的な理由とか根拠の裏付けはありません。

じゃあそのあたりをまるっと人工知能で解決できるかというと、多分できるんだと思います。より効率的で透明性の高い取引の仕方や記録の方法は、人工知能のほうがうまく作り上げることができるはずです。

でもそういう未来は来ないと思うのは、権威という問題があるからです。

中央集権的な権威という問題

そもそも会計監査って何をやってるかっていうと、大したことやってないんですよ。極論すると、帳簿に書いてある数字が合っているかどうか、通帳や領収書と見くらべてるだけなんですね。しかも全数チェックすると大変だからという理由で、一部しか見てません。驚きでしょう?

こんな作業、はっきりいって誰だってできます。でも公認会計士の特権的な業務になっているのは、まさに会計士が公認というお墨付き、いわば権威をもっているからに過ぎないんですよね。

で、この権威を誰がもつのかというのは、すなわち権力闘争になります。会計士に与えられた特権的な身分を、合理的だという理由だけでわざわざ人工知能に任せるなんてことはしないはずです。

やるとしてもせいぜいサンプルの全数チェックを手伝わせるとか、不正な取引の特徴を抽出するとか、まあそういった類の話です。それは別に人工知能というテクノロジーとは関係ない話ですね。

最後は会計士が目で見てチェックするし、潰しちゃいけない会社だと思ったら適当な理由をつけて適正意見を出すでしょう。その世界に、テクノロジーのフレーバーは全く感じられません。

まとめ

ということで、会計監査の未来はどうなるのかということでいうと、会計業界はこれからも感覚的で根拠のない会計ルールをどんどんと築き上げていき、自分たちが公認されているというただそれだけの理由で、それらの会計ルールにお墨付きを与えるという、極めて不毛な作業を続けていくことでしょう。

そもそも中央集権的な権威というもの自体が、ブロックチェーンという仮想マネーで使われている技術で代替される可能性が高まっています。そうなれば、資金決済や帳簿のあり方自体に革命が起こりますし、税制や国家という枠組み自体が見直しを迫られるかもしれません。

そうした時代においては、旧型の権威に縛り付けられた世界は急速に力を失うはずです。会計監査という仕事は人工知能が代替すべきものではなく、そうした概念自体が緩やかに消滅するのだと思います。

私は人生の一部分を使って会計という勉強をしたことについて、今では結構後悔しています。研究者やエンジニアを志望している若者の皆様に置かれましては、是非ともこんな不毛な世界に立ち入らないでいただければと願っております。

ちなみに、ブロックチェーンのもたらす未来につてはこちらの本がお勧めです。ブロックチェーンの技術は旧来型の権威を破壊する可能性があります。

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