研究

ブラック研究室の「悪魔の戦略」が、あるあるすぎて笑えない。

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どうも、ケンドー修介(@tensyoku_postdo)です。

さて、みなさんが所属している、あるいは所属していた研究室は、ブラック研究室でしたか?

と、いきなりライトな感じで話題をふってみましたが、ブラック研究室問題は、当の学生自身にとっては笑い事ではないですよね。

私が学位取得後に所属していた研究室は、まさにブラックを煮詰めたような漆黒のラボでした。そんな体験をもとにして書いたのが、このブログのタイトルにもなっている「ポスドク転職物語」です。

ポスドク転職物語 バイオ系研究者が民間企業へ転職するまでの、すったもんだの物語

その中で、ブラック研究室は「悪魔の戦略」をとっていることがあると書きましたが、どうやらこの悪魔の戦略、私の想像していた以上にブラック研究室界隈では良くある出来事のようです。

というわけで今回は、研究室の悪魔の戦略について解説するとともに、そういったラボに入らないためにはどうしたらよいか、入ってしまった場合はどうすべきかについて解説してみたいと思います。

悪魔の戦略とは何か?

研究室の悪魔の戦略というのは、私が「ポスドク転職物語」の中で作り出したことばです。

ポスドク、真摯さについて考える。(ポスドク転職物語 第22回)

研究室の目標は、良い論文をたくさん書いて業績を作り、その業績によって競争的資金を集めてくることです。

この目標は、研究室主催者である教授のキャリア形成にとっては重要である一方で、所属している学生にとっては正直どうだって良いようなものです。

学生にとっての研究室とは、専門の知識を学び、アカデミアでしか体験できないような知的探求をおこなう場所です。そして、それらの知識を活かして有利な条件で就職するための職業訓練の場でもあります。

ところが、こうした「学生のためになること」というのは、研究室運営にとっては正直あんまり重要ではないんですよね。。

研究室の悪魔の戦略はこのギャップを悪用します。すなわち、教授のキャリア形成にとって有利になるような活動だけにフォーカスし、学生のためになる活動は最低水準におさえるのです。

悪魔の戦略には2つのポイントがあります。

一つ目のポイントは、学生という労働力を徹底的に酷使するということです。まともな指導はせず、ただただ単純作業を繰り返しさせます。こういった作業は本来は技術員などを雇ってやらせるのですが、その分の経費を学生という「無償の労働力」で浮かせるのです。

これが行き過ぎると、学生に対する過度なプレッシャーや恫喝などになります。そうやって心理的な拘束をすることで、学生を思い通りに動かそうとするのです。研究室のような狭い世界ではよくあることです。

こうした態度は博士課程の学生に対してはより顕著になります。彼らは博士号という餌というか、人質を取られていますので、多少の無理なら聞きます。

はっきりいいましょう。悪魔の戦略においては博士課程の学生は3年では卒業させません。4年、5年と飼いならして、徹底的に搾取するのです。もちろんその間は給料の支払いなどありませんから、無償の労働力(しかもそこそこ経験のある若者)をたっぷりと使えるんですね。

悪魔の戦略の二つ目のポイントは、論文の出し方にあります。

このような研究室ではあまり論文を出しません。その代わり、数年に一回といったペースでNatureの姉妹誌に論文を出します。姉妹誌というのは、たとえばNature Biotechnologyとか、Nature Cell Biologyといった、Nature ~ という名前がついている論文のことを指します。

姉妹誌というのがポイントで、NatureやScienceなどには届かないようなものでも、気合と根性させあれば、意外と姉妹誌への掲載はできてしまうものなのです。

ただそのためには、色んな研究結果をゴチャッとまとめてボリュームを出す必要があります。そこで、一人の人に何年も研究させて大量のデータを取らせたり、何人もの人の成果を無理やり合算させたりするんですね。論文が数年に一回しか出ないのは、こうした作業をしているからです。

当の学生やポスドクにとっては迷惑以外の何物でもないのですが、任期がなく、大きな業績が数個程度あれば十分な教授にとっては、このやり方がもっとも効率がいいのです。

かくして研究室には、まともな研究をさせてもらえずアカハラを受け続ける修士課程の学生と、いつまでたっても卒業させてもらえない博士課程の学生と、そして任期中に何の業績もあげられなかったポスドクたちがドロドロになって集積することになるのです。

これが研究室の悪魔の戦略の実態です。

本当にあった!!悪魔の研究室

このような内容をポスドク転職物語に書いたところ、多くの共感をいただきました。なかには、本当にこんなラボがあるの?という声もありましたが、そうした方はきっとホワイトな研究室に属していらっしゃるのでしょう。素晴らしいことです。

そんな方に、このブログに届いた1通のメールをご紹介したいと思います。

ケンドー様

はじめまして。いつもブログを楽しく拝見しております。

(中略)

さて、ポスドク転職物語に出てくる「悪魔の戦略」の例があまりにも身近にあったので、思わずメールを出してしまいました。

私のいるラボには中国人留学生の方がいます。彼はマスターからラボに来たのですが、6年経ったいまでも卒業させてもらえず、7年目に突入しそうな状況です。

真面目で大変温厚な方で、実験も毎日夜遅くまでおこなっているのですが、とにかく論文を書かせてもらえません。

もともとその方のテーマ自体も、数年前にポスドクだった方がおこなっていたものを引き継いだということですので、かれこれ10年近くも同じテーマを続けていることになります。

教授が言うには、あと少しでレベルの高い雑誌に掲載できると思うから頑張って欲しい、とのことですが、どう考えても自分の実績を上げたいがために言っているようにしか聞こえません。

中国人の彼のご両親は高齢なのですが、残念ながらお父様は先日お亡くなりになったというのです。自慢の息子を異国の地にやり、博士号を取らせてやりたいとの思いだったと思いますが、そんな夢も叶えることもできず、残念だったと思います。

私も研究者にあこがれてこの研究室に入りましたが、このような実態を目の当たりにして、嫌気を覚えました。これからはケンドーさんのブログを参考にしつつ、アカデミアからは離れたところで仕事をするつもりです。

ということで、いかがでしたでしょうか?なぜ教授がこんな振る舞いをするのか、悪魔の戦略の背景を知っていればよく理解できると思います。

ちなみにこのあとですが、論文は無事仕上がり、中国人留学生の彼は晴れて学位を取れたそうです。ちなみに論文はNatureの姉妹誌に掲載されたそうです。

悪魔の餌食にならないために

こうした研究室というのは氷山の一角で、実際には似たようなラボが日本中にあることと思います。

このようなブラック研究室に入り込まないためには、事前にしっかりと情報収集をしておくことが肝心です。詳しくは、以下の関連記事をお読み下さい。

・(参考記事1)なぜブラック研究室を見分けるのに論文リストを見るのが良いのか
・(参考記事2)なぜブラック研究室の学生はいつまでたっても学位を取れないのか

簡単にまとめると、論文があまり出ておらず、博士課程の学生がいつまでたっても卒業させてもらえないラボは注意が必要です。その理由は、みなさんならもうお分かりですよね?

運悪くブラック研究室に入ってしまった場合は、残念ながら諦めるしかありません。修士の学生であればそれほどの害を受けることはないとは思いますが、狭い世界をいいことにアカハラをしかけてくる連中もいます。そうした場合は、メールなどの証拠を保全しておき、大学のしかるべき部署に通報しましょう。

まとめ

ということで、今回はブラック研究室にはびこる「悪魔の戦略」について解説してみました。

研究室で過ごす数年間というのは、大学生活を締めくくる上で極めて重要な期間です。そうした重要な期間であるにもかかわらず、研究室選びはなんとなくですませてしまう人が多いのは残念なことです。

就活のときにするような情報収集を、研究室選びでも是非ともおこなって欲しいものです。

私の願いは、そうした情報収集活動の結果としてブラック研究室には学生が近寄らなくなり、研究室運営が成り立たなくなって閉鎖されてしまうような、そのような自然淘汰の圧力が働くことです

みなさまの周りでもブラック研究室の情報がありましたら、是非ともこのブログにご連絡を入れていただければと思います。

不幸な研究室人生を歩まれる方が一人でも減ることを願っております。

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