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ブラック研究室の元スタッフが暴露する、本当にヤバイ研究室とは?

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理系の学生にとって研究室選びは将来を決める重要な選択です。修士課程に進学した場合は卒研も含めて全部で3年間も所属することになるわけですから、研究室は慎重に選びたいものです。

ところが最近になって、「ブラック研究室」の問題がクローズアップされるようになり、研究室選びが一筋縄ではいかない事が明らかになってきました。ブラック研究室では学生に暴力的な言葉を投げかけたり、長時間の実験を強要するなど、常識では到底許されないような行為が横行しています。

ネット上にはブラック研究室に配属されてしまった学生の悲鳴にも似た声や、卒業したばかりの人たちによるブラック研究室を見極めるためのリストなどがあり、この問題の根深さを物語っています。

ここでは視点を変えて、ブラック研究室でスタッフ側として働いていた側の経験から、ブラック研究室の見分け方やブラック研究室が生まれてしまう背景について解説してみたいと思います。

もしも運悪くブラック研究室に配属されてしまったら研究のことはすっぱりと忘れて、一刻も早く泥舟から抜け出しましょう。それがあなたにとって最善の選択肢になるはずです。

ブラック研究室のスタッフとして働く日々

私がスタッフとして働いていたのは、とある地方の大学の附属機関でした。そこで私は「ポスドク」と呼ばれる任期制の研究員として研究活動をしていました。任期制というのは要するに非正規雇用のことで、1年ごとの契約で働き、契約が満了すると新たに働き口を見つけなくてはいけないという、そういった立場の研究者です。

ポスドクというのは不安定な立場の労働者のため、必死で実験をして論文を出そうとします。ところが研究室の教授はとにかく自分の業績のことしか考えておらず、論文は一流と呼ばれる雑誌にしか投稿しませんでした。そのためほとんどのポスドクは任期中に論文を出すことができず、その結果として職を失っていきました。

このブログのメインコンテンツである「ポスドク転職物語」は、そんな劣悪な環境に置かれながら、どうやって新しいキャリアを築いていったら良いかを考えた過程を、物語風につづった体験談となっています。

このように私のいた研究者はスタッフにとってもブラック研究室であったわけですが、学生にとっても地獄のような環境だったと思います。

無償の労働力としてひたすら実験を任され、ただただ単純作業を続けさせられます。研究室に完全に閉じ込められ、学会発表などに参加することはできません。教授の思い通りの結果が出ないときなどは、大勢の前で公然とののしられたりするのです。

研究室には意欲が高く、博士課程まで進学しようとしている学生もたくさん来ましたが、彼らが博士号を取れることはほとんどありませんでした。大量の実験をさせられ、どんなに結果がたまっても論文を書かせてもらうことはかなわず、3年間の博士課程はあっというまにすぎ、それでも頑張って4年、5年としがみつくものの、最後には疲れ果てて研究室を去っていく学生を何人も見てきました。

そんな彼らに対して、大した力もないポスドクとしてはどうしてあげることもできず、私を始め多くのスタッフがつらい気持ちで見守っていたのでした。

ブラック研究室を見極めるのは意外と難しい

私の働いていた研究室は疑いようもないブラック研究室だったと思いますが、当時はブラック研究室という言葉もありませんでしたから、目の前で起こっている異常事態が何を意味しているのかよく分かりませんでした。

そもそもブラック研究室というと、暴力的な態度の教授だとか、強制的に長時間労働を強いる環境などといったものをイメージするかもしれませんが、昨今のコンプライアンスが厳しくなった中で、このようなあからさまなアカハラ(=アカデミック・ハラスメント)をしてくる研究室というのは実はあまり多くないと思います。

むしろ大学で一定の地位を築き上げた先生達というのは、一見人当たりがよく政治力もあるために顔も効き、外部予算を獲得する能力も高いために学内では尊敬されているケースの方が多いのです。こうした教員たちが研究室という閉鎖的な空間では独善的に振る舞い、研究室をブラック化させている張本人であるということが珍しくありません。私が働いていた研究室というのが、まさにこのタイプでした。

このような「隠れブラック研究室」を外からの視点で見極めるのは意外と難しいです。教授の人当たりは一見すると良いため、授業で話している雰囲気などからはブラック化の兆候をうかがい知ることはできません。外部からお金を取ってくるのはうまいために資金的にはうるおっており、研究成果もきちんと出しているように見えます。アカデミアのことをほとんど知らない学生が、研究の内容だけでブラック研究室を見極めるのはほとんど不可能と言って良いでしょう。

隠れブラック研究室の特徴

このように隠れブラック研究室を見極めるのはなかなか難しいのですが、それでもいくつか特徴があります。こうした観点というのは学生として研究室にいただけではなかなか見えてこないものですので、是非とも参考にしてみてください。

研究結果をあげることだけにしか興味がなく、教育に関心がない

大学の研究室というのは研究機関であると同時に、教育機関でもあります。したがって学生を指導することは重要な任務のはずなのですが、多くの研究室では研究結果をあげることにしか興味がなく、教育機関としての自覚がない場合があります。

これは何故かと言うと、そもそも研究者というのは教育者としての資質が評価対象となっていないからです。特に最近は研究者間での常勤のポスト争いが熾烈を極めており、そこにはどれだけ優秀な研究をしてきたかという点がもっとも重要なのであって、学生に対してどのように接するかといった視点はほとんどないのです。

業績の評価にならないのであれば、学生に対する教育支援は適当で良いということになりますし、学生からどのように評価されていようとお構いなしなのです。

逆にいえば、学生からの評価や教育に対する姿勢が重要とされる大学や学部などでは、ブラック研究室は生まれにくいということもいえます。自分の進学する組織が教育をどの程度重要視しているのかといった観点で見てみるのも良いでしょう。

学生を労働力としてかみない

研究というのはお金と時間、そして大量の労働力を必要とするものですが、日本では伝統的に研究室の学生を無償の労働力として捉える傾向が強いです。

海外などで研究をしてきた人からすると、大勢の学生を労働者として使っている日本の光景は異常に移るようです。バイオ系の研究などは特に労働集約的なところがあり、単純作業を大量にこなす必要がありますが、そうした作業をパートタイマーを雇用せずに学生にやらせるということは、教育的な観点からも問題が多いです。

逆にTA(ティーチングアシスタント)として大学院生に給与を支払っているような研究室は、教育と労働の問題をしっかりと考えていますので、進学する価値は高いでしょう。

歴史のある研究室はタコツボ化している

企業で働きはじめて特に思うのですが、健全な組織というのはそれなりに新陳代謝が良いものです。その点、大学の研究室というのは学生は常に新しい人達が入ってきますが、組織のトップであるところの教授は何十年も変わっておらず、これは見方によっては異常です。

全ての研究室がそうであるともいえないのですが、歴史がありスタッフが固定化されている研究室というのは、独特の風習謎のルールがあったりして、タコツボ化していることろも少なくありません。

まだ若い先生が立ち上げたばかりのラボのほうが風通しもよく、自由に研究できる可能性は高いです。(とはいっても、若くても人格破綻者の教員はたくさんいるので、注意が必要ですが)

行きつく先は高学歴ワーキングプア

こうした研究室のブラック化というのは、ここ最近で急速に耳にするようになってきました。

その背景には、昨今のアカデミアを取り巻く労働環境の悪化が影響を与えている可能性は否定できません。

学部の学生の方などは研究者とは一体どういった人なのかあまり具体的なイメージが湧かないかもしれませんが、実のところ研究者の多くは非正規雇用の契約労働者です。いわゆる「正社員」扱いの研究者というのはほんの一握りしかいないのです。研究室でいえば教授や准教授クラスがそれに相当し、助教やポスドクといったスタッフの多くは将来が決まっていない不安定な身分におかれています。

このような人たちは次の職場が見つからない場合は失業してしまうため、彼らを称して「高学歴ワーキングプア」などといったりもします。

非正規雇用者の割合が増えれば、組織としてもギスギスとしたものになります。その一方で、終身雇用の教授の相対的な立場は非常に強力なものになるため、組織に対して高圧的に振る舞うことが許されてしまうのです。

これから研究室を選ぼうとする学生の方は、こういったアカデミアの末期的症状についても知っておいて損はないでしょう。

ブラック研究室から脱出するために

ブラック研究室に入ってしまった場合、そこから脱出するのは基本的には難しいです。

研究室に入る前は夢や希望、研究に対するワクワク感といったもので一杯だったかもしれません。ところが目の前にあるのはブラックな研究室。落ち込んでしまっている学生の方も多いでしょう。

そんなときは研究室のことなど忘れて、さっさと就活を始めましょう。

私はブラック研究室で数年間に渡って働いていましたが、アカデミアにいても将来いいことは何もないなと思い、民間企業へ転職しました。結果、この選択は自分にとって大正解でした。

民間企業とアカデミアを改めて比べてみると、大学の研究室がいかに異常な空間だったかということが良く分かります。閉鎖的でタコツボ化された組織というのは、普通では考えられないような非常識行為が横行しているのです。

その点、民間企業はコンプライアンスはしっかりしているし、社員教育も充実しています。部下をほったらかしにしていたりしたら、まず最初に上司のクビが飛んでしまいます。

アカデミアのブラック研究室のような時代錯誤の企業は、最近では見つけ出す方が難しくなってきています。

進学するつもりだったので就活については全く準備していないという人は、今からでも遅くないので、就職マッチングイベントなどに参加してみるのも一つの手です。例えばMeetsCompanyは東証一部上場企業からベンチャー企業まで優良企業が2000社以上集まるなど、この手のイベントでは最大規模のものとなっています。

イベント後には就職のプロによるアドバイスもあり、応募書類の添削・面接対策など一人ひとりに合わせたサポートが受けられます。

理系の研究室で専門的な教育を受けている人材は、就活市場では大きな強みを持ちます。そうしたスキルをいつまでもブラック研究室でタダ働きして消費してしまうのはあまりにもったいなさすぎます。専門家のアドバイスに耳を傾けてみると、大きな発見があるはずです。

是非とも民間企業への就職にかじを切って、充実した人生の船出を目指してみてください。

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まとめ

今回はブラック研究室で働いていたスタッフとしての立場から、ブラック研究室の特徴をいくつかピックアップしました。

景気が悪くなれば企業でもブラック化することろが増えるのと同じで、大学などのアカデミアでは予算削減や非正規労働の問題で疲弊し始めており、そうした要因がブラック研究室を生み出しているのです。

運悪くブラック研究室に配属されてしまったら、運命を恨むのではなく、研究室のことはさっさと忘れて新しい人生の舵をとりましょう。その方がよっぽど充実した人生を送れるようになりますよ。

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  • 管理人プロフィール

ケンドー修介

東大を卒業して研究者の道に進むも、アカデミアの厳しい現実に直面してドロップアウト。 夢破れて借金あり、なんて言ってもいられず、30半ばから資産形成を開始。インデックス投資のほか、仮想通貨やブログ運営による収益化も組み合わせています。 副業ブログによる収益は、初年度で100万円を超えました。

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