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超高学歴なのに貧乏なポスドクとは?!気になる給料や転職事情について元バイオ系ポスドクが解説

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大隅先生がノーベル賞を受賞し、科学に関する話題をニュースなどで聞くことが増えてきました。中でも、子どものなりたい職業に科学者がランクインしたというのが話題になっています。

こういった明るい話題の一方で、研究者の労働条件の悪化に関する話題も耳にするようになったかもしれません。なかでも「ポスドク」と呼ばれる身分の研究者の待遇についてはいろいろなところでニュースになっています。

ここでは、ポスドクとは一体どういった身分の職業なのかについて、待遇や給料の情報についてまとめてみました。それと同時にポスドクになってしまった場合、どのような転職が可能なのかについても自らの経験を踏まえて解説してみたいと思います。

将来研究者を目指している学生や、お子さんや配偶者などの親族でポスドクになっている人がいる方は、是非とも参考にしていただければと思います。

ポスドクとは何か

ポスドクとは博士研究員を英語にした Postdoctoral Researcher(ポストドクトラル リサーチャー)を略した言葉です。

博士研究員とは文字通り、博士号を取得した研究員のことです。

博士号を取るためには、大学卒業後に大学院に進学し、2年間の修士課程3年間の博士課程を修了することが必要とされています。つまり、博士号を取得するためには大学・大学院と合わせて最低でも9年間は大学にいる必要があります。このようにして晴れて博士号を取得した暁にはプロフェッショナルの研究者として研究に携わることができるようになります。そのような研究者たちが最初に通る道がポスドクです。

ちなみに日本では「学歴」というと、どの大学を出ているかという「学校歴」のことを指すことが多いと思いますが、世界的な基準では学歴とは学部卒か院卒か、院卒の場合は修士卒か博士号をもっているかを指すことが多いようです。つまり博士号取得者というのは国際的な基準では「超高学歴」ということになります。

ポスドクの給料は?

このようにして博士号という資格を手にしたポスドクたちは、どの程度の給料をもらうことができるのかは気になるところでしょう。

実はポスドクの給料は文系か理系かによってその水準は大きく異なり、また理系の中でも分野によってかなり異なります。

ここでは特に私が所属していたバイオ系のポスドクに絞って説明したいと思います。バイオ系ポスドクの収入については、やや古い資料ではありますが日本学術会議が2011年に調査したものが有名です。

http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-t135-1.pdf

この資料によると、ポスドクの約40%は400万円以下の年収であること、(所属機関の)健康保険に加入できない人が10%程度いることなどが明らかにされています。

バイオ系に限らず理系全般でもポスドクの年収はおおよそ300万〜600万円くらいの水準であるという見方が一般的です。

この金額が高いかどうかというと、「超高学歴」の割にはたいしたことがないと思われる人が多いかと思います。ただしポスドクは本来は20代後半から30代半ばくらいの年齢層をターゲットとしたポジションであるため、日本国内の同年齢と比べれば普通かやや高いくらいの水準とみることもできます。

ただし、ポスドクの給料を考える際に重要なのは、以下にに述べるようにその雇用形態にあります。

ポスドクは非正規雇用労働者

ポスドクになると普通は1−3年の期間で労働契約を結ぶことになります。つまりポスドクは非正規雇用なのです。ポスドク問題と呼ばれる諸問題の大部分の原因はこの部分にあるといっていいでしょう。

大学新卒にとって自分が正社員職につけるかどうかはその後の人生を占う重要なポイントであり、まさに死活問題といっても過言ではありません。ところが博士号取得者に用意されているのは、その大部分がポスドクという名の非正規契約社員の道なのです。この事は博士課程以降のキャリアについて馴染みのない人に取っては意外に思われるかもしれません。

したがって契約の切れたポスドクは正規職員を目指すか、もう一度別のポスドクのポジションにつくことになります。残念なことにアカデミアで正規職員になることは非常に困難なため、不安定な身分のポスドクを何回も繰り返さなくてはならない人が増えているのです。

なぜ博士卒の人材に正社員扱いの研究職が用意されていないかといえば、良く言われているのが人材の流動化です。これはどういうことかというと、研究者を正規雇用にしてしまった場合、大した研究業績も出さないのに大学に居座り続けてしまい、本当に実力のある人材が正規職員になれないという問題が起こってしまうかもしれず、そうならないために、適度な競争状態を維持し、真の実力ある人間が適切なポジションにつけることができるように任期制競争資金による資金獲得を促そう、というのが大まかな趣旨です。

さて人材の流動化が本当にアカデミアにおける生産性を上げるのかについては議論の待たれるところですが、そもそも日本の現状として人材が本当に流動化しているのかという疑問があります。実際のところ、既に正規職員(教授など)になっている人たちを今更非正規雇用に変えるわけにも行かず、それどころか大学教授の定年は延長されているため、正規職員のポジションは高年齢層の職員が独占しています。

その一方で、正規雇用される若手の割合は相対的に低下しており、ポスドクはその受け皿として機能することとなってしまいました。本来は若手のためのポジションであったポスドクが、40代以上の中堅研究者向けに転用されてしまっているのです。

率直に言って、現在の日本でアカデミアに残って研究を続けたいのであれば、実家が金持ちか、配偶者の収入に頼るなどしない限り生活は厳しいと考えておいたほうが良いでしょう。

ポスドクの転職事情

このようにポスドクになると経済的な困窮に陥ることを覚悟しなくてはなりません。そこから抜け出すためには、アカデミアから脱出して民間企業へ転職することが一番の近道です。

このブログではアカデミアの労働環境に耐えきれず、なんとか生活を一からやり直したいと考えているポスドクに向けて、具体的な転職戦略を述べた記事をいくつか書いています。民間企業への転職に興味がある方は是非ともこちらも読んでいただきたいと思います。

バイオ系ポスドクのための転職必勝マニュアル
ポスドクが民間企業で年収800万円を稼ぐための戦略的転職法とは?

一部ではポスドクの民間企業への転職は非常に困難だという言い方をされていることもありますが、やり方さえ間違えなければポスドクの転職は必ずうまくいくと思っています。特に、私がアカデミアから抜け出したころに比べてポスドクの転職マーケットにおける価値は劇的に高まっています。そして一旦アカデミアから抜け出すことに成功すれば、給与面を含めた待遇は圧倒的に改善するのです。

「資格」としての博士号の意義

このような不安定な身分しか保証されないアカデミアの現実を見て、研究者になりたいと考えている若い学生は不安を持つかもしれません。それでも研究が面白そうだと思っている場合、どうしたら良いのでしょうか。

私の個人的な意見では、研究に興味のある学生はとりあえずは博士号取得まで頑張ってみるのが良いと思っています。博士号取得の過程で触れることのできる研究の意義や困難さは、人生の中でそう何回も経験できるようなものではないでしょう。

なによりも博士号という肩書は、民間企業、特に外資系企業においてはキャリアを築く上でも有利に働きます。博士号を「資格」と割り切って考えてしまえば、その取得によるコストパフォーマンスはそこそこよいのです。

ところで大学の研究室を資格取得のための養成機関と考えたとき、注意しなくてはならないのがブラック研究室問題です。このような研究室に入ってしまうといつまでたっても博士号が取れないので十分注意して下さい。

なぜブラック研究室を見分けるのに論文リストを見るのが良いのか
なぜブラック研究室の学生はいつまでたっても学位を取れないのか

まとめ

今回はポスドクとは何かということについて、非正規雇用の実態や転職の事情などを含めて解説してきました。

将来研究者になりたいと考えている若い学生の方や、身内でポスドクの方がいて苦労されている人は、是非ともここに書かれた内容をよく読んでいただきたいと思います。アカデミアでの就労にこだわりさえしなければ、博士号取得後の人生を実り豊かにすることは十分可能だと思います。

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