ポスドク転職物語

ポスドク転職物語の副音声【突撃編】

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ポスドク転職物語 18〜23

ポスドク、洗礼を受ける。

さて、いよいよ戦略コンサルの面接が始まりました。本文中で出てくるケースややりとりは、ほぼすべて実際に私が経験した内容です。

とりとめのない雑談や、研究について語り合った内容は今でもよく覚えていますが、中には忘れてしまいたいような冷や汗の出る質問もありました。

とりわけ、「あなたを採用することによる我が社のメリットは何ですか?」という質問は、ポテンシャル採用を狙って活動していた自分には厳しすぎる内容でした。しかも相手は絵に描いたような「ミスター ロジカル」氏。しどろもどろになって、結局何をしゃべったのか良く覚えていません。

しかし、転職というのはよく考えてみれば自分という「商品」をお客さんに売り込む営業活動なわけです。相手が欲しいといって手を挙げてくるのではなく、いわば飛び込みで売り込みに行くわけですから、相手にとってどんな得があるのか、わかりやすく伝える必要があるのは当然です。そのことを意識していれば、もう少しまともな答えが用意できたのではないかと思います。

自分を採用することによるメリット、あなたなら何と答えるでしょうか。

ポスドク、強みを知る。

戦略コンサルの面接回数が多いのは有名な話です。私自身は最大で6次面接まででしたが、場合によっては8次面接まであったというケースもあるようです。コンサルファームは人材が経営の要ですから、採用にはそのくらい気を使うのですね。ただし、遠方から面接を受けに行くような場合は、一度に2回面接をおこなってくれる場合もあります。

面接を何度も受けているとだんだんと勝ちパターンが見えてくるようになります。自分の場合、ビジネスケースはそこそこに、研究の話や物事の考え方などの話に花が咲くと、いい感じの雰囲気になり、合格することが多かったように思います。逆に、ロジックを突き詰めたような面接ではうまく自分の力が発揮できませんでした。

その点についてはケンドーが転職エージェントからも指摘された通り、インターパーソナルスキルという強みをうまく発揮できるかどうかが合否の要になっていたのでしょう。問題は、自分の弱点とどう向き合うかですが、ここまできてしまえば無理に弱みをカバーする努力はしない方がいいと思います。それよりは、自分の強い部分をなんとか出せるような雰囲気作りをどうやって出すか、いわば勝ちパターンへの持っていき方に注力した方が良い結果になるのではないでしょうか。これは面接に限らず、およそ人生のあらゆる場面にあてはまる考え方だと思います。

ポスドクと、ドラッカー。

本文に登場するドラッカーの本は、みなさんも良くご存じではないでしょうか。

ドラッカーの様々な名言について、作者が咀嚼し、自分なりの言葉として表現しており、読んでいて様々なことに気づかされます。ストーリーとしてもよくできていて、さすが大ベストセラーになっただけあるなと納得させられます。

さてドラッカーはその著書の中で、利益をあげるのは企業の目的ではなく「条件(essenntial condition ) 」だと述べています。さらに、事業の目的については「顧客の創造」であるとします。このようなドラッカーのことばを公的な基礎研究にあてはめると、どのようなことがいえるでしょうか。

論文の発表と研究費の獲得は研究室運営にとっては必須の条件です。しかしながら、公的な資金を投入しておこなう以上、研究の真の目的は別にあるはずです。それは一体なんなのか、私なりの考えを登場人物に語らせたのがここの部分です。

ポスドク、真摯さについて考える。

研究室における教授の存在というものを、組織におけるマネージャーと置き換えて考えてみようというのが、ケンドーと黒岩先輩の議論の趣旨になります。

ドラッカーはマネージャーの持つべき唯一の資質として「真摯さ(integrity)」をあげていますが、研究室の教授にとってintegrityとはいったい何になるのでしょうか。

本文中に書いたように、研究室運営を成功させるもっとも簡単な方法は「悪魔の戦略」を取ることです。実際、アカデミアの研究室の多くではこのような戦略が取られているところが少なくありません。学生をいつまでたっても卒業させないことも、ビッグジャーナル以外に投稿することを禁止することも、教授のさじ加減一つで決まるのです。

そのようなことができる特殊な地位にある「にもかかわらず」、学生と研究員の成長に責任を持ち、組織及び組織の構成員全体にとって最善の行動を取ることができる指導者はわずかでしょう。短期的に見れば、そのような態度が必ずしも研究室運営にとって得にならないからです。この「にもかかわらず」が、私なりに理解したintegrityです。

残念ながら田所教授にはintegrityのかけらもなさそうです。そのような組織がどのような運命をたどるのか、黒岩さんの言葉の影に不吉な闇がひそみます。

ポスドク、いざ最終決戦。

人はなぜ占いを信じるのか。

これが私の受けた戦略コンサルの最終面接で出題されたケースでしたが、実際にはもう1問のケースが用意されていました。それは「日本の大学の世界ランキングを上げるにはどうしたらよいのか」というものです。

私は以前この欄で、戦略コンサルのケースではビジネス関連の話題が多数出題されるため、どうしても経営に近い位置にいた人の方が有利だと述べました。ところが、最終面接で出されたこのケースはビジネスとは全く関連のない話題どころか、研究者として長らく大学に在籍した私自身のためにカスタマイズされたような、よく考えられた問題でした。この問いに対し、私は無理矢理にいくつか結論めいたことを挙げ、その根拠について述べていくというような、いわゆるロジックのセオリーのような答え方をした記憶があります。

今にして思えば、大学とのつきあい方が人よりも濃密だった自分ならではの考えを、率直に、時には立ち止まりながら、ディスカッションを楽しんでいく方がよかったのではないかとも思います。大学ランキングはどのようにして作成されるのか、その中のどの要素に着目するべきなのか、あるいはそもそもランキングを上げることの意義は何なのか。こうやって考えると、なかなか奥深い面白いケースだったなと思います。Vice President と名乗られるだけあって、さすがだなという感じです。

このようにして私の戦略コンサルへの転職活動は終了したわけですが、いずれにしてもコンサルファームが必要としている人材、すなわち「頭の回転が早く、臨機応変に柔軟な発想が紡ぎ出せる能力」というものが、自分にはやはり足りなかったのだろうということを痛感させられたケースでした。研究者としても、じっくりと考えを巡らせることで思いをよらない発想を得るというタイプでしたので、ある意味納得のいく結果だと思います。

さて、このようにして当初の転職計画は修正を余儀なくされるわけですが、ここでどう踏ん張るかがこの物語の本当のポイントです。次回から、ケンドーの再チャレンジが始まります。

ポスドク転職物語の副音声 【再起編】

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